中央協同組合学園校友会

交流のひろば

今こそ国家百年の計を

町田重光(短大5期卒・東京支部)

 私は昭和16年生まれで68歳になりました。これまでの人生を振り返ると、戦後の貧しい生活の中で成長し、奨学金の助けを受け、昭和36年、協同組合短大を卒業し、全農(当時は全購連)に就職、結婚し、男女2人の子どもに恵まれ、全国を転勤しながら定年となり、現在は年金で生活しています。短大の同期生も、小・中・高での同級生たちもそれぞれに職を得て、結婚し、新しい家庭を築いている様子が年賀状のやりとりや、同級会などで伝わりました。

 その背景には、日本の社会体制があったと思います。工業の発展や道路等の公共事業、とりわけ1964年(昭和39年)の東京オリンピックを契機とした新幹線、高速道路等の工事にはどれだけの人が携わったでしょうか。そうした経済発展の中で、調整弁となったのは、農村の人たちでした。農作業の機械化が進み、農協の体制も拡充されたことが、一家の主の出稼ぎを可能にしたのです。雇用の需給関係がスムースにいく構造があったのです。

 現在はどうでしょうか。期間雇用の人、派遣社員の突然の解雇が後を絶ちません。他に職を求めても見つかりません。こうしたことが起こることを全く想定していなかったのは政治の失敗です。麻生首相は100年に一度の経済危機と言っておりますが、だからと言ってこれまでの経済政策に反省すべきことがなかっただろうか。自由主義経済万能のもと、大企業優先で大企業が発展すれば、全てが発展するとの考えが脆くも崩れたのです。

 その反省に立ち、今こそ新しい国家設計図を作るべき時です。「国家百年の計」を樹立すべきです。政府の中長期対策を見ても設計図は見当たりません。これから先、外需に重点を置く経済発展の設計図は描けません。内需をどのように伸ばしていくかが問題であることは明白です。高齢化・後継者難を抱える農業・林業・水産業の見直し、地域振興の要となる商業・観光産業の見直しをすることから始めなければなりません。

 そして、協同組合という形態についても、注目すべきだと思います。農協・漁協のみならず、生協についても同様です。共通の目的、協同意識を持った協同組合組織が、産物・商品の売買のみならず、地域での子育て支援、高齢者の生活支援等を行うことは、とても有意義なことですし、就業人口の増加にも繋がります。

 私は、昨年、東京マラソンを走り、四国八十八ヶ所の歩き遍路をしました。お遍路で泊まった民宿では、「子どもたちが都会に出たきり帰って来ないので民宿も自分たちの代で終わり」というところがいくつもありました。建物も老朽化が目立ちました。四国八十八ヶ所は、世界遺産を目指しているそうですし、外国人とも何度か出会いました。自分の将来を探しながら歩く若者も少なくありません。

 東京マラソンも、歩き遍路もしっかりした道しるべがあり、応援してくれる数多くの人々がいます。日本の未来に向けての道しるべと支援体制が誰にも分かるように示されれば、希望を持って前に進むことが出来ます。3月22日開催の東京マラソンには、3万5千人の定員に対し、26万人が応募しました。昨年の15万人の2倍近い人数です。フルマラソンを走るエネルギーを持った人たちです。こうしたエネルギーは、単にマラソンだけに向けられるものでなく、人生全般に向けられるものだと思います。実用新案特許をつぶさに調べれば、実用化に価するものが数多く眠っているかも知れません(私も一つ登録しています)。知恵と努力を傾注すべき方向を持った政治が必要です。

 自民党も民主党も日本の新しい設計図の議論をしていません。来るべき総選挙には、是非「国家百年の計」の骨格を示し、設計図を示してもらいたいと思います。